Vol.1 楽器の歴史と時代の流れ[投稿日:2018年9月11日]

ディアンジェリコ アンジェリコ ジャズギター フルアコ セミアコ 楽器製作 ベスタクス

製作中のディアンジェリコギター

1970年の後半に楽器の製造会社をコングロマリットが買収して傘下に収めるということが始まったのです。産業というより家内制手工業的な会社が規模的に大きくなって資本主義経済の仲間入りするような動きが出てきたのです。 ギブソンはノーリンというグループの傘下になり、CBSの傘下にFenderが入った。私がヤマハをやめた同年代にヤマハの川上源一社長が『脱楽器宣言』をしたという社内通達がありました。楽器より、大きくなる事業性に転換をするという触れ込みでした。楽器が好きな私にとって不幸なニュースでした。

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椎野 秀聰

    

一方、町工場は世界に向けて自社製品を売れるチャンスが出てきたのです。かつての木工場はギター工場に格上げになり、全く楽器を知らない人やおばさんたちが大勢働いていました。 そうした中で海外でもクラフトマンシップと工芸的な楽器作りが変化し工場の適正とコストの削減を考えた移転が行われ、生産性や効率を高める動きが進みました。結果は承知の通り、品質の低下やQCの喪失などいろいろなトラブルが発生することになりました。楽器をマニュアルで作ろうとしても多くは木材を使用していて資源に限りがあるのと職人さんの技術ではなく、技能に頼ってやってきたもの全てをデータ化することは不可能ですからマーケットが拡大すればするほど粗製乱造になってしまうわけです。 ミュージシャンと楽器職人がともにリスペクトし合いながら培ってきた楽器インストルメントを工業製品化しようとしたのです。

洋の東西を問わず元来楽器もミュージシャンも宮廷の中で王室や権力者が宮廷職人として面倒を見てきた歴史があります。 ヤマハを退社した後、楽器(インストルメント)とは何かを追い求めていろいろなものを研究開発していたところ、大きくなってきた楽器工場や大手楽器メーカーからトラブルの解消のためのプロジェクトの依頼がひっきりなしにまいこみ、20歳代の後半から40年間もの長い間楽器の仕事に携わることになってしまったのです。 70年代には反体制の音楽がもてはやされ若者は一斉にギターを手に活動を始めたわけですから楽器に供給が曲単位不足したのも大きな出来事でした。 1980年代になるとミュージシャンの世界も売れる音楽を求める傾向が出てきて、いい曲作りや良い演奏よりウケを狙う音楽が金に結びつくことに翻弄され出し良い楽曲もめっきり少なくなり、楽器も音楽も使い捨ての時代になってきました。商業化と出版権という言葉が音楽の世界におおきく変革の嵐となって表面化した時代でもあったわけです。 人は豊かな生活を手に入れるために大事なものを失い始めたのです。

私の所感ではギターはバイオリン等と比べるとまだ完成された楽器ではないように感じます。 世界的なルシアーの工房を訪ね、ほとんどのギター工場を視察しましたがそんな感じがします。 ギターの魅力はその一本でアンサンブルも独奏もできしっかりした演奏も楽しむだけの演奏も手軽にできるところにあります。 ピアノほど大げさでなく持ち運び容易いで部屋の片隅おいても場所もとらずオブジェとしてもいいのですからこんなものはそう簡単に手に入りません。 21世紀は心の世紀と言われていますが虚構の中での生活感がますます広がりパンク寸前のこの時自分が大切にしてきたギターをもう一度見直してみてください。

ディアンジェリコ アンジェリコ ジャズギター フルアコ セミアコ ベスタクス クラシックギター

椎野 秀聰

プレーヤーのために心を込めて楽器を作り、音楽を楽しむ。

地球上の生物の中で有史以来楽器を持っていたとも言われている人類に立ち返りスマホに依存するのより楽器をたしなみ、 楽しくこの美しい地球で生きていくのもまんざら悪くはないことではないでしょうか。 次回はなぜ21世紀のギター工房ディアンジェリコギタートラディショナルなのかについて書いてみようと思っています。

筆者:椎野 秀聰