Vol.7 ジャズという概念の変化 [投稿日:2019年2月10日]

ご存知のようにジャズの発祥はアフリカから連れてこられた人たちのある種の叫びであり自由や人間性の回帰に魂が力強く動いたのだ。 最初はアメリカでもなかなか受け入れられなくてヨーロッパで人気が出すと金になればアメリカという国は何でも受け入れてしまうから60年代ごろには豊かな時代が始まる。

第二次世界大戦後の悲惨な状態から国が発展すれば音楽も楽器も何でも右肩上がりとなり音楽も大きなファクターになった。電気楽器の登場や新しいリズムの電界がジャズをさらに後押しして色々なジャンルに展開してきた。その中でギターという楽器も大いに市民権を得たことは歴史が証明している。私は1947年生まれで横浜育ちだからジャズやC&Wの音楽を聴きながら育ち70年、80年代の音楽全盛の時代に遭遇し、仕事を通じて楽器も大いに発展して楽しい時代を過ごした。80年後半から音楽も楽器や音響機器の製造も拝金主義に陥り現代のような形に変わってしまった。ある種今の人が言うジャズは全盛時代のものとは根本的に異なり、ジャズギターなるものも変わってきた。私は原音という世界を土台に楽器を設計し、シグナルデバイスや音響製品を数多く作ってきたがそういう概念もすっかり変わってしまった。90年以降はデジタル時代に入って電子楽器はみんな音が同じ様になってきて曲つくりもキャドを使う様になって同じようになってきた。

音楽そのものが長い人間の歴史の文化を学ぶことなく異なる形になってきている。そのような変遷を否定はしないが人間は言語と同時期に楽器を使い色々な文化的な表現もしてきたが音楽の品位や質感を伴わない楽器や音響機器の世界が広がる中でこれから人はどんな音楽との生活をしていくのだろうか。前迩したジャズギターという呼称はジャズそのものが変わったのだから当然その使い方も変わってくるだろう。しかしながらノスタルジックな話とは別に元来継続してきた音楽の三要素、リズム・メロディー・ハーモニーに立ち返れば感覚的に元に戻ることはなくても若いこれからの人が昔の音楽を紐解き新しい音楽や楽器を想像することだろう。その時に参考になる楽器や音響機器を最後に作っておくことが私の最後の仕事ではないかと思いポンコツな身体でやっています。

ギターは未だに完成されたものはないと思うし、たかだか100年ぐらいの暦に形が整いだしてきたものである程度完成した形で決まってきたのは50年ちょっとしかないのだから、今後は21世紀の新しいギターが出てこないといけない。それには設計に基本の分率や音が出る仕組みなど基本的な人の長い歴史での結果を知っていた方が良い。音も構造もなんでそうやってきたかも知らなければ発想だけではうまくはいかないような気がする。友人であるアメリカのジャズプロデューサーが『アメリカのジャズは200年には死滅した』と寂しそうに語ったことが頭から離れない。金や欲にくまされることなく音楽や音の楽しい世界にもっと人間は心を入れ込んでも良いのではないか。そんな気がしてずっと長い間人生を歩いてきました。自分独自の音が出せて信頼できる相棒のようなギターとともに自分やグループド記事の音楽お世界を創造し、その音楽を聴衆と分かち合えるそんな楽器や音響機器を作っておこうと思っているのです。1960年代から1980年ごろまで音楽がパワーとなって反戦や文化に大きなインパクトを与えた時代を知っている祖父としていっておきたい。

ディアンジェリコギタートラディショナル

前にも書いた事ですがディアンジェリコギターそのものはヨーロッパから100年ぐらい前にアメリカに渡った楽器工房の会社の手作りのギターに比べると技術的にも素材的にも劣るところがあったと思いますが、アメリカのジャズ屋さんに気に入られたのだから感覚的にはジャズ的にいいものがあったのだと思われます。

もう少し詳しくいうと楽器は材質の選定や管理から始まって木材の加工技術や楽器としてどのように音を素材で作るかということから始まって単に良い素材があればいい楽器が出来るものではありません。設計にも分率や音の作り方などがノウハウとして長年にわたって培われてきたのです。例えばFホールもそれなりにデザインでああいう形になっているわけではなく位置や形が音に重要な結論があります。そのようにヘッドストックの形や角度も重要なファクターでありネックの形状やボディーの設計でも楽器はその性格がどんどん変わってしまうのです。もちろん接着剤や塗装が違ってもサウンドばかりではなく耐久性や楽器の品位も違ってきます。私が1989年にジェリー・バーバリーニに頼まれてディアンジェリコを再生産するにあったって50箇所以上を変更や設計の直しを施し完成度を増そうとしたのはそれだけ重要な基本的な問題が当時のものにはあったとも言えます。

ギターに関して言えば完成度は当時のエピフォン・ギブソン・ギルドマーチンなどのドイツ系の人たちやアイルランド系の人たちのもとかなり差があったと思います。しかしドイツ系にはないイタリア系のアンジェリコはイタリア系の良さが感覚的にあってジャズミュージシャンに気に入られたこともあったのだろうと思います。そこでアンジェリコギタートラディショナルはその思い入れと心意気をベースにドイツ系の技術も取り入れてバランスよくまとめたモデルになっています。ですからこのディアンジェリコギタートラディショナルのコピーものが世にたくさん出ていますがよく観察してみればデザインも設計もいろいろ点も電気パーツを含めてしっかりコピーができていないことがよくわかります。そこで今後はこのチームが製作するものはディアンジェリコギタートラディショナルと呼ぶことにしたわけです。最近は歴史のあるギターメーカーもファンドや資本主義の発展おかげで楽器を作る製造会社からからビジネス主体の金儲けの商品になり会社が思い入れや心意気、情熱で楽器を作れなくなってきました。そこで最後のギター好きの為のギターを作りたいと考え製作を行っています。
そういうギターは弾き手が大事に情を入れて弾けば必ずそれに答えた美しい音で演奏者を引き立てると思っているからです。

筆者:椎野 秀聰